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株式会社日本コンピュータコンサルタント(NCC)
企画室 部長代理
長岡永典 様
お客様が抱える課題を解決すべく幅広くシステム開発を行われ、自社製品の介護事業所支援システム「介舟ファミリー」を販売されている株式会社日本コンピュータコンサルタントの企画室 長岡永典様に「SSI-iCD」についてお聞かせいただきました。
導入時期:2006年8月
導入の背景
日本のソフトウェア産業は、大手システムインテグレータを頂点とした階層構造になっていて、弊社(NCC)は第二層に位置します。NCCの多くの社員は大手SIerのパートナーとしてシステム構築の業務経験を持ち、大手SIerは、ミッションクリティカルなシステム開発を通じて高い工程管理、品質保証を維持する独自の手法やノウハウを持っており、NCCの社員もパートナーとして業務を担う過程で、同様の高い技術力を蓄積しています。また、自社開発の介護事業者向けのパッケージソフト「介舟ファミリー」は、「大手パッケージベンダー製品と遜色ない品質」という評価を顧客から得ています。
しかしながら、大手SIerがパートナーに期待する業務範囲には一定の制約があり、NCC社員が上流・超上流と呼ばれる工程業務に携わる機会にあまり恵まれず、これを打破して、僅かでもプライムの比率を上げていかなければ、製造作業中心では東南アジアの海外発注勢力の後塵を拝することとなります。このため、iCDを活用して社員のスキルマップを可視化し、社員の保有スキルを正確に補足してキャリアアップのためのスムーズなローテーションを実現することが必要であると考えました。
導入の決め手
社員のスキルマップやスキルの評価基準を可視化することで「会社が求める人材像(ロールモデル)を社員に示す」ことや、社員のキャリアパスを確立することにより、「なりたい自分になるための道標となる」こと、さらに、社員のキャリアパス確立の自己啓発を支援し、弊社が目指す「メンタリング」とよばれる自律的キャリア形成推進のツールとして、iCDを活用することが最も適しているため導入を決定しました。
導入までの具体的な内容
iCDで定義するロールモデルは、会社から「こういう人材を求めている」という社員に対する強烈なメッセージとなるため、この部分がぶれないように気をつけました。企業目標達成のために、どのような人材が必要かを見極めることは、企業、および社員にとって非常に重要なことであり、要求分析によって明らかになった指針を反映し、具体的で現実感があり、かつ社員が将来に夢や希望を持てるものにするという考えで9種類のロールモデルを策定しました。
このなかで代表的なロールモデルのひとつがクルーとなります。クルーは「自分の仕事の対価として給料をもらった時点から、入社年数に関わらず全員がプロフェッショナルであるべき」という考え方で設けた役割であり、NCCという船に乗り込んだクルーとして、指示されたことに対して完遂する責任感を持ち、社会人としての基本を養ってもらうことを期待して用意したもので、担当業務や職種、役割に関わらず必ず通過する共通ロールモデルとして設定しました。
目標キャリアは、定義したロールモデルを使って代表的なキャリアパスを設定し、現業の既存キャリア(4種)+将来的に会社が目指す新規キャリア(4種)を設定しました。特に新規キャリアのキャリアパス定義は自社にノウハウがないため、iCDのタスク評価基準・役割判定基準に当る部分についてはコンサルタント会社の助言をいただきながら策定しました。
キャリアパスは、入社して2,3年目までは、人材モデルを分けることはせずに、一律クルーとして基礎的なスキルを身につけ、レベル3からは、担当業務や本人の持つ能力や資質などで、それぞれ上位レベルに繋がるパスを設定しています。これらを基にして各社員はキャリアプランを選択し、上司の助言や支援を受けながら成長目標を設定していきます。
NCCは、iCDスキルディクショナリの「ITヒューマンスキル」にあたるコンピテンシーを独自に策定しています。iCDを導入する目的のひとつは「会社が社員に求める指標(ロールモデル)を明確にする」ことであり、コンピテンシーは非常に重要な要素として位置付け、全24ジャンルにわたるコンピテンシー項目を規定しています。
NCCのコンピテンシーは、成果を上げる行動特性として、若手社員には大きく3つの基本コンピテンシー「前に踏み出す力」「考え抜く力」「チームで働く力」を示し、中堅社員以上には、コンセプチュアルスキル、つまり「現在の状況や問題点を概念的に捉え、物事の本質を見極める能力」を示すことで、社員が「物事をうまくできる人」になるためのスキルを磨き、「なりたい自分」が会社からも求められる人材でもあるよう定義しています。
また、コンピテンシーはクランボルツ理論の「キャリアは偶然の出来事によって左右されるが、良い偶然の起こる確率は、普段の行いによって大きく異なる」という考えのもとに、iCDで具体的な将来のキャリアイメージを持ち、仕事や生活のなかでスキルUPを意識した行動をとることで、自ら行動する意思をもち、積極的に行動することができる人になる、つまり自律的なキャリア形成を目指せるような仕組みにしています。
入社後、当初の配属は必ずしも本人の希望する職種ではないかもしれませんが、「キャリアは100%意のままにコントロールできる訳ではなく、8割は偶然の出来事によって決定されている」という事実に向き合ったうえで、理想とするキャリアをイメージすることで、実際にそこに近づくチャンスを引き寄せる“偶然を掴み取る力”、つまり、偶然の出来事を“ただ待っている”だけではなく、“自ら生み出す”指針を、iCDによって示しています。
導入効果
社員はiCDを利用することにより、キャリアパス提供によるスキル研鑽意欲の向上や、コンピテンシー提供による自発的な行動規範の意欲による、自己実現と組織貢献による満足度向上を得ることができました。また、iCD導入過程で企業目標を明確にすることで、会社のビジョンが明確になり、「なりたい会社」を幹部から一般社員まで広く明示することができ、iCDを用いてタスクを明確に切り分けることで、以前は設計部門の一部であったパッケージ開発・営業部門を、独立したビジネスプロモーション部門として事業本部化するなど、会社組織の改革にもつながっています。
また、これまで定性的に把握していた各社員のスキルが定量的に把握できたことも大きな成果となっています。iCDの保有スキルの一覧を見ることで、普段の業務で活用する技術以外に、個々の社員の持つ技術の幅広さを知る機会を得ることができました。具体的には、社員が取得している職種スキルや要素技術を収集することで、部門(プロジェクト)にまたがって全社の社員編成を可視化することができ、社員の横断的な人員配置にiCDを活用することが可能になりました。
iCDで集まったデータの集計結果は事業戦略にも活用しています。社員の所有スキル・要素技術の統計情報等から、開発言語や開発環境のスキル分布の推移を分析し、汎用機・レガシーシステムの縮小や情報サービス市場のオープン化への動き、外販・パッケージやITコンサルタントの拡大と、金融系案件の大きな変化(銀行系の開発案件の縮小と保険証券案件の拡大)など自社の業態変化を把握し、時代に即したメッセージを中期経営計画の基本方針として社員に指し示すことができました。
今後の展望・課題
NCCは中堅若手社員の人材育成のためにiCDに新機能「能力開発機能」というツールを追加しました。能力開発機能は、2014年度より試行運用を始め、2019年度より本格運用を開始して人材育成のPDCA運用を推進しています。
社員は、スキルアップの実践と確認を、能力開発計画という目標設定機能を作成・メンテすることで、キャリアアップの方向性が目に見える形になります。
また、能力開発機能を通じて、上司と部下の間で具体的な育成目標を共有することができるため、有効な研修受講を助言することや、関連する業務にアサインするなど、部下の育成に対する具体的な取り組みが行いやすくなっています。将来的には能力開発機能を用いたOffーJT研修の教育受講申請との連動などを検討していきます。
DX人材育成に関しては、DX推進スキル標準(DSS-P)をもとに、DX推進に必要な人材類型のなかから、今後のNCCとして必要なロールモデル「ソフトウェアエンジニア(クラウドエンジニアおよびフロント/バックエンドエンジニア)」「デザイナー(UX/UIデザイナーおよびサービス/グラフィックデザイナー)」のロールおよび必要なタスク・スキルを検討中です。
iCDの活用により社員のヒューマンスキルのレベルを把握して、適切な育成につなげることで、社員の自律性を高めて、ただ売上の拡大を目指す「ラージャー(より拡大)」ではなく、NCCの経営ビジョンである「セルフ・ディシプリナリー(自律的な組織であること)」が社員に浸透することを期待しています。
株式会社日本コンピュータコンサルタント
設立:1980年
資本金:5,000万円
URL:
https://www.n-c-c.co.jp/
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